あおいうみ

茨城のキモヲタクが書く暇つぶし

あおいうみ

チャリで行く 御岩山

古くから山岳信仰が栄えてきた日本。この世とあの世の境であるとされてきた山は神の宿る場所として祭祠が行われてきた。水の恵みや豊作祈願など。さらにその険しい山道を修行の場所と捉えて悟りを開く修験道なども栄えた。そんな信仰の対象だった山は時代が進むにつれ庶民の行楽地になってきた。旅行人気が高まる江戸時代には多くの山が開山した。明治に入ると日本アルプスなどに測量等の探検が行われるようになる。そこでみた美しい景色、雄大な自然の話は庶民に広まり大衆化。大戦期で一旦は下火になるものの、戦後には多くの山岳会が結成し活発化した他、道路網の整備などでハイキングなど手軽に山に登ることが出来るようにもなったのもこの時期。中高年層登山者が多くを占めるようになった現在、健康維持などで山に登る人が増えているがその一方で山ガールが生まれたり、ニコ動でRTA*1を行う者、祖父母に連れられてなんとなくで山に登って登山家を目指すようになった者、そして聖地巡礼を行う者と近年は若者にも登山というものが身近に感じるようになっている…。

ヤマノススメ4期制作発表で若者(というかヲタク)に再び登山ブームが巻き起こりそうな今日この頃、私は永遠と続く坂をひたすら自転車で登っております!


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ヲタクは限界行動をしがち、確かにそんな気がします。普通、というか大抵の人間は鈍行で東京大阪間を移動しませんし、車で電車を追いかける、駅で寝る、空港で寝る、足柄駅から足柄駅へ乗り換える、自転車で東京から前橋に行くといった一般からみたら馬鹿で頭のおかしい行動が数多く見受けられます。そんな限界行動を私もやってみたくなりました、ということで自転車で行けそうなヤバい場所、御岩神社に行ってみることにしたのです。


今回目的地に指定した「御岩神社」は日立市の西、標高277mの集落のはずれに位置しています。ふたを開けると歴史は古く山を中心とした信仰が生まれたのは縄文時代とも、常陸国風土記にはこう記載されています。

"この里*2の東に、大きな山があり、かびれの高峯*3といひ、天つ神の社がある。昔、立速男の命*4が、天より降り来て、松沢の松の木の八俣の上に留まった。この神の祟りは厳しく、人が向かって大小便でもしようものなら、たちまち病の災を起こす。里には病人が増え続け、困り果てて朝廷に報告し、片岡の大連を遣はしてもらって、神を祭った。その詞に、「今ここの土地は、百姓が近くに住んでゐるので、朝夕に穢れ多き所です。よろしく遷りまして、高山の清き境に鎮まりませ。」と申し上げた。神は、これをお聞きになって、かびれの峯にお登りになった。その社は、石で垣を廻らし、古代の遺品が多く、様々の宝、弓、桙、釜、器の類が、皆石となって遺ってゐる。鳥が通り過ぎるときも、この場所は速く飛び去って行き、峯の上に留まることはないといひ、これは、昔も今も同じである。"

常陸国風土記』-久慈郡(現代語訳は口訳・常陸国風土記より)

近年では国際宇宙ステーションから光が見えただか山で神の姿を見ただかどうか定かではないがそんな事からパワースポットとして県内外から多くの観光客が訪れるようになりました。確かに騒がしい都会の喧騒を抜け車で1時間半、新鮮な空気とやさしい木漏れ日、冷たい水に触れながら御利益を頂ける場所ですしなにより常磐道を日立中央ICで降りて道なりに進めばいいというアクセスも上々、まあ人が来るわといった感じです。神社に参拝してから日立駅の海が見えるカフェでお茶しようだかこの時期だとかみね公園で桜を見ようだかそんな事も出来たりします。

それはさておき、今回のルートはそんな観光客も利用する県道36号日立山方線、日立市から水郡線の駅*5のある常陸大宮市の山方地区を結ぶ路線です。で下に地図を表示していますが国道6号線との交差点から最高地点まで何と標高差が300mもあります。

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一応言っておきますがこの区間、自動車は上りはけたたましいエンジン音を上げて登り、下りはエンジンブレーキを多用して下るという自動車でもキツいであろう区間です。それを自転車で登ろうなんて体力バカでもやらない行程です。

 

AM 10:40-国道6号線桐木田交差点

少々遅めの出発。まあ同じ市内ですし、いいでしょう。

右手に工場を見ながら進んでいきます。足尾、別子と並び富国強兵を支えた日立鉱山、それを源流として高度経済成長期と現在の日本を支える日立製作所とJX金属の工場が今もこの狭い場所で操業をしています。

日立中央ICを過ぎて暫くすると道は左にカーブを描き本格的な山道へ。突き当りはここもJX金属の工場になっていますが鉱山があった頃、40年以上前ここには日立鉱山大雄院精錬所があり鉱山で採れた銅鉱石をここで精錬、使える形にして鉱山電車と呼ばれた鉄道で日立駅へ、そこから全国各地に出荷していました。そんな精錬所があった裏手の山には煙害対策の為に建てた大煙突があります。高層気流に乗せて有害な亜硫酸ガスを太平洋上に飛ばすという大胆な発想のもと高さ155mと東洋一の高さを誇っていた大煙突は老朽化で下3分の1を残し倒壊。当時の姿そのままではありませんが、当時の面影を現在に残しています。

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ここからは上り勾配とカーブが続きます。ただひたすら上り坂、正直しんどいです。ギア比を下げも漕げません。仕方なく自転車を降り、押していきます。押しながら登る、これが結構しんどい。自転車って重いので普通に登るより多くの体力を消耗します。

AM 11:20-赤澤不動尊

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山道を登ること30分、雰囲気のいい場所に到着しました。ここは赤澤不動尊。近くには不動滝という小さな滝があるらしいのですが見てわかるように落石だかで立ち入りが出来ませんでした…。いやこんなので区切っているだけなので入っている人は入っているのだと思いますが入ってはいけないという場所に立ち入るのってコンプライアンス的によろしくないじゃないですか、ということで断念。

AM 11:30-本山の一本杉

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暑い、暑すぎる。道路上に気温表示器があったので見てみるとなんと20℃を示していました。一体、初夏ですよ。涼しくなりたい、背筋が凍る肝試しをしてみましょう。この本山の一本杉は県内でもそれなりに有名な心霊スポットだったりします。道路拡幅工事の際、この一本杉を切ろうとした人が不可解な死を遂げる、一本杉の付近ではよく交通事故が起きる、木に触れると死ぬなど真偽不明な噂がまことしやかにささやかれています。現在は神木として祀られており交通事故も激減。そんな一本杉の近くには霊が溜まりやすいとされているトンネルや廃屋があり、それが噂を引き立てている原因なのかもしれません。それもそのはず、鉱山があった頃この辺り一帯は鉄筋コンクリートのアパートが立ち並び最盛期にはこんな狭い土地に1万人もの人が住んでいたと聞くと驚きが隠せません。現在は整地された土地の雑木林と石垣がここに何かがありましたと言わんばかりに残されています。

AM 11:43-日鉱記念館

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少しばかり登ると日立鉱山の歴史を伝える日鉱記念館があります。坑道を再現した展示室や鉱山での暮らし、公害対策の歴史など様々な展示があり、私自身校外学習ということで小学生の頃に連れてこられたのですが実際の坑道を使って展示をしたり坑道用トロッコに乗れる足尾銅山観光やいわき市にある石炭化石館ほるるの方が面白いと思います。特に後者は湯本駅を降りて徒歩10分とアクセスしやすいですし。

そんな記念館の横をこのトンネル、本山トンネルで一気に山の向こうへ進みます。ひんやりしていてとても涼しいです。トンネルを抜ければ御岩神社まで下り坂、ラストスパートです。

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霊?そんなものいませんよ
AM 11:50

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麓の国道6号線との交差点を発って約1時間、遂に御岩神社に到着です!いやあ長かった。折角ここまで来たので参拝していきましょう。

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赤い仁王門が見えてきました。アホな私は気付かなかったのですがよくよく考えると神社に寺院の仁王門があるのはおかしいですよね。これはこの御岩神社が神仏習合であったことを色濃く残している証です。神仏習合で有名なのは厳島神社で神社なのに五重塔があったりしますがこちらには仁王門、さらに明治政府による神仏分離令などの廃仏毀釈の運動以前には大日堂もあったようです。そんなこの仁王門も後の時代に再建されたものだったりします。

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立派な本殿です。丁度5円玉があったので賽銭箱に入れ健康と安全と学力向上、金運上昇、恋愛成就、視力回復を祈りこれで帰宅…

 

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これで帰ると思うなよ~~~~~~!!!!!!(CV 小原好美

ということでこれより先、「かびれの高峯」を目指して参道という名の登山道を登っていきます。山頂までは上り40分、下り30分と1時間くらいで戻ってこれそうです。何?昨日は雨だったからぬかっている?靴がトレッキングシューズじゃなくてスニーカーだからやめておけ?全国の登山ヲタクから「山をなめるな」と言われそうですが知りません。お昼時で人が少ないのでさっさといきましょう。

最初はやや平坦な道が続きますが、石やら木の根が出てきて本格的な登山道へと入っていきます。いやあわくわくしてきました。なんだって登山自体が久しぶり、最後に登った山は中学に入る前に筑波山に登った以来だと思います。時間がないんですよ、あと鉄道とバスの移動だと行ける範囲が限られてくるしお金かかるし…。はやく車ほしいですね。ちなみにこの御岩山、難易度としては入門位だと、途中きつい傾斜とか岩場があるわけでないですしなんだって初心者に毛が生えた程度の私がスニーカーで登れた山です。天覧山、茶臼岳、鋸山とかに登れた人なら余裕だと思います。

 

 

と思っていた時期が私にもありました。

いやあ、きついよスニーカー。滑るしグリップ力が皆無。ズルって何回いったことか。「スニーカーでも登れるやろ」と言って登り始めた過去の自分をぶん殴りたいです。

登り始めてしまったものは仕方がありません、ぐんぐん登っていきます。登山口から20分、奥宮賀毗禮神宮に到着です。風土記にもある通り廻りが石垣で囲われておりここだけまた違った雰囲気を醸し出しています。

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お手を合わせて写真を撮って先へ、頂上はもうすぐです。

 

途中人とすれ違ったり道を間違えたりしながら15分、御岩山山頂「かびれの高峯」に到着です!

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喜びのVサイン

上からの景色は格別、天気も良く阿武隈山地を構成する山々が一望。これを見た時に「登って良かった」と心から思いました。

 

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山頂近くには「石柱のあるお宮」という祠がありますが何を祀っているのか、何故ここに建てられたのか、案内図やネットを見ても情報が得られませんでした。とりあえすお手を合わせて水分補給をして下山します。

下山には別のルートを使います。先程登ってきたのは名前だけ聞いたら高級そうなお店がいっぱいあって千代田線が通っていそうな表参道、帰りは裏参道を使って下山していきます。表参道より道がきついとかそういう印象は無かったです。

 

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三本杉に囲まれてお堂がある場所に来ました。ここはかつてこの辺り一帯を支配していた佐竹氏の墓がある場所でそれに関係するものだと思います。

 

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その近くには薩都神社の中宮が、木々の中にある鳥居はこれもなかなか良い雰囲気です。鳥居が新しすぎる気がするのですが…、まあいいでしょう。

 

この後はチャリを漕いで約1時間掛けて登って来た道を下り坂でスピードにのせて5分で下り、その足でかみね公園でお花見をしたのですが流石にそこまでの記事を書くとあと数日掛かりそうなので今回はここで終わりにしようと思います。で、感想なのですが御岩山自転車アタック、出来なくはないといった感じでしょうか。だってたったの1時間ですよ?余裕ですよ。これより強風に煽られながら大洗まで行った時の方がしんどかったですもん(片道2時間半)。もはやこれまで

 

 

ありがとうございました
2021/4/2

*1:リアル登山アタック

*2:薩都の里、現在の常陸太田市南部

*3:現在の御岩山

*4:速経和気ともいう

*5:山方宿駅