あおいうみ

茨城のキモヲタクが書く暇つぶし

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バスに乗るッ!【奈良交通 八木新宮線乗車録】

 私、以前に宗谷バスの天北宗谷岬線に完全乗車したんですよ。

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 稚内音威子府 約5時間。北の果てを走る長距離路線バスに絶望し、私はこう思いました。「もう二度と長距離路線バスなんて乗らねえ」「あ?八木新宮線?新宮なんて行く機会ないだろガハハ」

 あ~~~~新宮行くのか…………そうなのか………。

 

行ったなら乗るしかねえ!ということで乗車してきました。

 

 

八木新宮特急バス。大和八木駅新宮駅を結ぶ八木新宮線で1日3往復運行されるバス。路線169.8km、停留所数168、所要時間約7時間、運賃6,150円。同一経路で運行されるバスとしては日本最長である。

世界遺産の道筋

 始発の新宮駅に降り立ち、バスの到着を待つことにすると、既にのりばには1人の男性がいる。長年乗り物系のオタクをやっていればわかる。同業である。

「初めて乗るんですか?私昨日往路で新宮に来たんですよ~」

まさかの往復乗車。そんな往復乗車する程魅力があるのだろうか?お話することはなかったですがあともう1人同業者がおり、こんな長距離路線バスに完全乗車しようとする者がこの便だけで3人いるということである。ちなみに先の往路完乗男性曰く、昨日の往路便には10人の完全乗車達成者がいたそう。嘘だろ多くないか?

 

 9時59分、バスは新宮駅を発車。

「お待たせいたしました、ご乗車ありがとうございます。特急302系統 川湯温泉 湯の峰温泉 本宮大社前 ホテル昴 十津川温泉 上野地 五條バスセンター 近鉄御所駅 高田市駅経由 大和八木駅行です」

長い機械アナウンスが終えると運転手により「本日は日本一長い路線バス、八木新宮特急バスにご乗車頂きありがとうございます」とアナウンスが入り、この路線が他の路線と違うことをアピールしてくると同時に、新宮城を眺め速玉大社前を通過する。

 市街地を走り、国道42号から国道168号に入り、新越路トンネルを超えると市街地が急に終わり山がちの国道へ。右側に熊野川が見え、対岸は三重県という場所を走っていく。左手に滝などを眺めながら進んでいくと、請川の集落で国道を一度離れることに。そのまま大塔川に沿う道を進んでいくと間もなく川湯温泉に到着。川湯温泉はその名の通り川に湯が沸く温泉。湯治客は水着を纏い河原を掘って温泉に入るそう。

 

 川湯温泉の次は湯の峰温泉世界遺産に登録されている「つぼ湯」は日に7回も色が変わるという不思議な湯。そんな2つ温泉の不思議さ、珍しさは日本人のみならず外国人にもウケ、湯治を終えた多くの外国人で席が埋まる。

 狭い峠を越え、急に開けた地に出でて、クソデカ鳥居が見えてくると大斎原。元は熊野12柱並び本宮大社があった場所。明治の水害で社殿が流され現在の熊野本宮大社へ移った歴史がある。そんな本宮大社前のバスターミナルへ到着する。

 

日本一の十津川村

 本宮大社前バスターミナルで外国人を大勢吐き出し、女性2人を乗せるとまた車内に静寂が訪れる。ここからがこの路線の本番。土河屋の集落を過ぎると和歌山県田辺市を離れ、日本最大の村、奈良県十津川村に入り七色の集落を通る。

 そんな七色の集落を迂回するように架けられた七色高架橋は、谷間を沿うように作られた高架橋。延々続いてほしい天空の道は途中でぽっきりと折れ、地形に沿ったグネグネ道路に元通り。しかし運転手にとっては慣れた道のようで華麗なハンドル裁きで酷道を駆け抜けていく。

 途中、ホテル昴に立ち寄るために日本最凶酷道425号に片足を入れると、十津川温泉の玄関口である十津川温泉バス停に到着する。ここでは10分の休憩だ。

 

 十津川温泉バス停は奈良交通の十津川営業所を兼ねる場所。足早に用を済ませ、向かう場所は併設されている足湯。完全乗車を目指す旅人にとって少しばかり温泉を楽しむことができるスポットだ。

 

 そんな十津川温泉は「源泉かけ流し」の創始者。2004年に村内の湯泉地温泉、上湯温泉と共に「源泉かけ流し宣言」を行い、村内全ての温泉宿が源泉かけ流しを提供している。この足湯も勿論源泉かけ流し、ここまでの疲れを癒やすにはもってこいである………………………………………あ、あと5時間疲れるバスに乗るのか。

 

 バスは十津川温泉バス停を出発し、崖にへばりつく集落を駆け抜ける。途中の込之上バス停を最寄りとする十津川高校は奈良県で最初に出来た高校。時は1872年の学制交付…より前の1862年、時の孝明天皇の勅命により文武館を開設したのが始まりであり、現在に至るそう。

 乗る人が皆無でも地域路線なのは確か。今戸や滝といった国道を逸れた小規模集落にも立ち寄る。その中でも今戸集落は、集落を縦断する旧国道をそのまま進めば次の滝集落のバス停に辿りつくものの、道路が災害により不通。そのため今戸バス停で転回し、現道のバイパスを通り迂回運行を行っている。通常であれば「バスなど乗る人いない」と判断し、バス停を廃止したりしそうだが、自治体にとって無くてはならない交通機関だからか、効率を無視し「地域住民の為」に路線維持をしているようだ。

 途中十津川村役場を過ぎるとバスは長いトンネルを超える。山間部でかつ深い谷は水力発電に最適な土地。十津川村には3体のダムが水を湛え、関西圏の電力事情を支える存在だ。その中でも野尻付近で国道を飛び越える水路橋は、風屋ダムで貯めた水を河流の発電所へ流す為の水路橋で、道路を走っていたら急に山と山を繋ぐ人工物が現れるのだから驚くものである。

 

 左手に風屋ダムの提体を眺め、相変わらずの道を走ると上野地の集落に到着する。ここでは20分と長めの休憩を取る。理由は十津川村が誇る日本有数の歩行者用吊り橋、谷瀬の吊り橋の最寄りであるためだ。

 

 対岸の谷瀬集落は長年交通困難地であった。谷を下り、洪水の度に流される丸木橋を渡り対岸の斜面を這い上がる毎日。そこで大卒公務員の初任給が7,650円の時代に集落の人々が1戸20~30万円という大金を出し合い800万円もの日本最長の吊り橋を完成させた。

 

 木製の横板は怖さこそあるものの、雨の中でも景色が良く下さえ覗かなければ渡るのは楽しいものだ。ただ風が吹いて揺れる上に寒い。しかも20分という休憩時間はあっという間だ。時間に気を付けて渡ろう。運転手曰く、発車時間までに戻らなかった人は、「上野地がとても気に入ってしまった」と考えて置いていくそう。

 

 休憩時間を終えバスは発車。次の集落は長殿。そして様々な景色で楽しませてくれた十津川村を脱し、五條市に入っていく。

 

爪痕と希望

 五條市最初の集落は大塔。平成の大合併まで吉野郡大塔村でありその中心集落だ。しかし運転手は悲しいことを言う「大塔にほとんど住民はいない」

 

 2011年8月、日本に上陸した大型の台風12号紀伊半島に甚大な被害をもたらした。関東圏の私にとっては半年前の3.11のインパクトから記憶すらなかったこの台風で、十津川村風屋では7日間の総降水量が1358mmに達し、各地に河川氾濫、土砂災害を引き起こした。特に大塔の被害は酷いもので土砂崩れにより十津川*1をせき止め天然のダムが完成し、川面は数m上昇した。地域住民は軒並み減少し、宇井集落に新校舎を建てて10年経たない大塔小中学校は使用できなくなり子どもたちに見放され、2018年に閉校した。

 大塔の少し北、閉君*2集落は集落全域が土砂災害警戒区域に指定され、住民は先祖代々の家を諦め集落の大半が空き家となった。そんな利用する人が居ないであろう集落にもバスは立ち寄り誰もいないバス停を通過する。自治体からの言付けもあるだろうが、住民がいる限りバス停を廃止する考えはないのだろう。

 

 バスは十津川を隔ててきた天辻峠を越え、賀名生*3の集落に入る。南北朝時代南朝の行宮が置かれた地であり、現在も当時の行宮跡が残っている。茅葺屋根の住宅が行宮跡であるとされ、バスの車内からでも見ることができる。

 

 賀名生の集落を抜け、山の上にある西吉野農業高校を経由する。誰もバスなんて使わないだろう…と思っていたら一転。学校終わりの帰宅する学生で本宮以上の賑わいが訪れた。青春真っ盛りの雰囲気のまま五条駅まで行くのかと思いきや、途中の五條病院前で殆どの学生が下車。どうやらこの高校、奈良県内のみならず全国から生徒を募集しているようで、近くに学生寮があり、その寮生がバスを利用しているようだ。

 

 五条駅で残った少しの学生と地域住民を降ろし、バスは五條バスターミナルに到着。ここで最後の休憩を取る。

 ここまで来れば大和八木駅まであと少し、先程と異なり市街地を走る。乗車してくる者、降りる者。夕暮れも街はここまで6時間以上掛けて移動してきた私達のような心の余裕はなく、忙しなく移動するばかり。そんな人こそ、この路線に終点まで乗車し、ゆったりとした時間を過ごしてみてほしい。

 

 そして新宮を発って7時間

「ご乗車大変お疲れ様でした。終点大和八木駅に到着です」

やっと到着した。しかしあの天北宗谷岬線のような疲労感はなかった*4。車窓から見える景色は素晴らしいもので飽きることはなかった。川、山、寺社仏閣、市街地。この景色の移り変わりがあり、更に吊り橋を渡って足湯にも入れるという乗るだけで楽しむことができるバス路線だ。一緒に乗ってきた男性が往復乗車しようと思い、皆がこの日本最長路線に乗る理由が分かった気がする。

 

日本一の路線バスは、日本一魅力がある路線バスである

 

 

あとがき

 1年振りに記事書いたせいで書き方忘れました。なんか書き方変わった気がするけどごめんね。いいよね?ありがとう

 八木新宮線の乗車録なんてインターネットのみならず書籍など至るところに散らばっていますが、こういう経験をしたからには文章に残しておきたいなと思いまして。久し振りにキーボードと画面に向き合っているわけです*5。あと記事書こうとしないと写真現像しないでほったらかしなんですよね。よくないでしょ、撮った写真を放置するのって。見せる形にしたいよね?ね?ね?ね?

 今回はなんだかんだいろんなことしたのでちゃんと記事にしたいですね。ということで次回は有馬輪花 楓花と南紀勝浦樹紀で低俗な記事が出来上がる予定*6です。よろしくお願いします

 

 

ありがとうございました
2025/11/4

*1:熊野川

*2:とじきみ

*3:あのう

*4:疲労感は無かったがお腹が空いた ご飯調達できるところが欲しいです

*5:仕事で毎日向き合ってるけどな

*6:予定。